Wednesday, April 22, 2009

阿修羅・吉岡徳仁・芸大

海外から一時帰国している友人と一緒に上野・渋谷・麻布界隈を散策してきました。


興福寺創建1300年記念 国宝 阿修羅展

第一の目的は東京国立博物館の平成館で開催されている「興福寺創建1300年記念 国宝 阿修羅展」の鑑賞。
以下、仏像好き故に仏像中心の感想です。


目玉はタイトルにもなっている国宝 阿修羅像(八部衆のうち)。
人気の仏像ナンバーワンと言える阿修羅は、3つの憂い顔と細長い6本の腕で何かと注目されていますが、当然ながら今回も阿修羅は特別扱いでした(笑)

阿修羅の陰に隠れていますが、十大弟子(現存する6体)、八部衆といった国宝が一堂に会するというのも見逃せません。
興福寺の国宝館ではいずれもがガラスケースにおさめられているため、この度の展覧会では背後から拝めるというのも貴重な体験でした。

また、展覧会という会場の特質上、仏像にはライティングによる「影」ができます。
この影がとても美しいので、お出かけになった方はぜひ優美な影もお楽しみください。京都・東寺並みです。

        十大弟子

        八部衆

展示方法でも注目を集める東京国立博物館ですが、第2室に入るといきなり十大弟子がズラリと並んでお迎えしてくれます。続いて八部衆(阿修羅を除く)が並び、各像を堪能した後、左右にいくつものモニター(阿修羅の各部位が映し出されている)が並べられたトンネルをくぐると、いよいよ阿修羅の登場です。

        阿修羅

見下ろす形で阿修羅に出会えるのですが、第一印象は「CGみたい」、「ライトが黄色い」ということでした。
光の加減なのでしょうけれど、もともと厚みのない阿修羅がレリーフのように見えて、3DCGが目の前に投影されているような錯覚を受けました。その分、アウトラインがクッキリとしていて、像全体の表情がわかりやすいように感じました。
保存のためなのか、像の細部を浮き立たせるためなのかはわかりませんが、阿修羅の持つ本来の色味がわかりにくいものの、永年の経過で退色しているとは言え、衣服(モンペみたいなところ)の柄は本当に美しかったです。

阿修羅をはじめ、天平時代のこれらの彫刻群は脱活乾漆という手法でつくられており、中身は空洞。粘土でつくられた原型に漆を含ませた布を重ねてゆき、最後に中の粘土を取り除くという方法ですが、木彫の像と比較すると、脱活乾漆と知らなくても何となく(重量が)軽そうな、中身が空洞そうな印象を受けます。
脱活乾漆の仏像はほかにもありますが、個人的には興福寺の十大弟子や八部衆に特に「脱活乾漆っぽさ」を感じます。

そのせいなのか、阿修羅を観るといつもイメージしているよりも華奢な印象を受けます。今回もイメージしていたよりもやや小ぶりに感じられ、あの憂い顔や細く長い腕、重心を感じさせない足もとがとても可愛らしく感じられました。
やはり魅力のある仏ですね。

さて、第3室には、大好きな仏師・運慶♥の仏頭と仏手が展示されています。

          仏頭

被災によって、西金堂本尊丈六釈迦如来像の頭部と手の一部を除いた全てが失われてしまったそうですが(だから国宝ではなく重要文化財なのね)、頭部を観るだけでもかなりの大きさであったことがわかります。
螺髪(らほつ。頭のグリグリのこと)も3割~4割方とれてしまっていますが、このまばらになった頭部のシルエットがとても美しいです。

同じ仏像でも下っ端(失礼)になるほど、衣や甲冑、顔の表情などの表現から繊細な面が見られるのに対して、如来系は全裸に近くツルっと張りのある表現(ある意味固い)がよく用いられますが(顔も無表情)、この像も元来は釈迦如来であることから、運慶が若かりし頃に彫った円成寺の大日如来に通ずる肌の張りが感じられました。それと同時に仏手からは、張りもあるものの動きのやわらかさも感じられ、ぜひとも像の全体を観てみたかったと残念に思いました。
運慶作の現存する最後の作品である興福寺北円堂の秘仏、無著・世親像(数年前の興福寺展で東京にも来ました。無著は運慶彫刻で一番好き)の持つ人間的な表現にどのように到達したのかを探る意味でも、全体像を観てみたかったです。あぁ、もったいない。
※無著・世親像の安置されている北円堂はGWに公開されてます(ました)

Story of... カルティエ クリエイション~めぐり逢う美の記憶

次いで同会場表慶館にて、デザイナー吉岡徳仁監修・プロデュースの「Story of... カルティエ クリエイション~めぐり逢う美の記憶」を観てきました。

ジュエリー好きではないのですが、これが結構面白かったです。
中国・インド・エジプトなどの東洋趣味のジュエリーがたくさんあるのですが、どれもフランス人が解釈した異国情緒、というような雰囲気で、楽しむことができました。

特に後半は、ジュエリーとともにエピソードの映像(ジャン・コクトー、ディートリッヒ、エリザベス女王、ティナ・ターナーなど多数)が投写されていて、その映像も、投影方法もステキなのですが、吉岡徳仁ってやっぱり好きかも、と思わされました。

最後には作業台が展示されていますが、映像と組み合わされて実に面白かったです。
現代アート、やばいんじゃない? と思わされました。

www.tokujin.com

東京藝術大学 大浦食堂

展覧会を見終えた後に空腹を覚えたので、ダメもとで芸大の大浦食堂に行くことに(大浦のおじさん、ちゃんと覚えていてくれました!)。

時々発作のように芸大名物の「バタ丼(豆腐のバター丼)」を食べたくなることがあるのですが、これまではなかなか実現せずにうなだれていました。
約10年ぶりの味に感動☆
味にうるさい友人も「おいしい」と納得してくれました。


ちなみに、バタ丼:480円、小バタ丼:450円。値上がりしてないか? いまはお味噌汁付きになったらしいです。


その他

長くなったので割愛しますが、上野を出て渋谷をふらつき、最後は麻布で焼肉を食べて帰りました。
バタ丼のせいであまり食べられず、レバ刺が売り切れでガッカリしましたが、目にもお腹にもおいしい一日でした。


仏像の写真はネット上の画像から転載させていただいています。

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