Monday, July 3, 2006

ヨーロッパ芸術の源泉─ルネッサンス美術とグレゴリオ聖歌─


《クレーヴォレの聖母》ドゥッチョ/1280年頃/シエナ大聖堂博物館


現代美術も現代音楽も大好きなのだが、実は古典もかなり好き。
「ヨーロッパ芸術の源泉─ルネッサンス美術とグレゴリオ聖歌─」なる講演を聴きに専修大学に行った。

前半である「イタリア・ルネッサンス美術の起源と展開」は、名前だけ知っていた池上公平先生(若い)の講演で、ルネッサンス美術の、古代美術(ギリシャ、ローマ)やビザンチン美術等との関わりが解り、良い意味で作品の見方、捉え方を変えさせるような内容でとても充実していた。また、美術よりも先に、文学が古代に源泉を得ていたということを知り、非常に驚いた。

スライド内に登場したドゥッチョ作《クレーヴォレの聖母》(1280年頃 シエナ 大聖堂博物館:写真参照)がえらく気に入り、幼いイエスが、不謹慎ながら甘えた時のパールと重なり合ったりもして、ご絵にしようと思い立った程だった。
母マリアに抱かれた幼子イエスが、マリアのベールをそっと掴む様子が描かれており、その小さな手や視線に、“神の子イエス” ではなく、“人の子イエス” であるという人間らしさが感じられた。
理由はなく、ただただ可愛く感じられた。

ギベルティが言うには “つたない表現” なのだが、ドゥッチョ的には “ウルトラ・スーパー・リアリズム” だと自負していたのだそう。後に続くルネッサンスで写実、人間らしさを開花させることになったヒントが、13世紀のこの絵に見てとれるというのが美術史的な見解のようだ。なるほど、あながち間違っていなかった(とほっと胸を撫で下ろしてみた)。


前半で満足してしまった為、後半の「グレゴリオ聖歌─専修大学図書館所蔵写本を中心に─」では退屈してしまうのではないかと心配だったのだが、テレビ等でも見掛けたことがあった皆川達夫先生の話が始まると、そのユーモアの溢れた話術にみるみる引き込まれてしまい、中盤になると、15世紀のグレゴリオ聖歌の写本(楽譜、これが専修大学に所蔵された二つのうちの一つである)が読めるようにまでなっていた。
参加者全員で、写本のコピーを読みながら「キリエ(あわれみの賛歌)」が歌えた時は、何とも言えぬ喜びを感じた。
またこの「キリエ」は、偶然にも耳に馴染みのある旋律だっただけに感動も一入。聞いていただけの「キリエ」を口ずさむことができるようになったのは大きな収穫でもあった。

グレゴリオ聖歌を知るために必要不可欠なカトリック教会の典礼(ミサ)の説明も、非常にわかりやすかった。
いつもミサに与る際は、典礼の流れに沿って馴染みの歌を歌うだけだったのだが、これらの歌がどのように分類されているかをより詳しく知ることも出来た。

最後は皆川先生率いる中世音楽合唱団が、グレゴリオ聖歌はじめ、ルネッサンス宗教曲や世俗曲を披露してくれたが、この美しい旋律を耳にして、中世音楽の素晴らしさを実感したとともに、素直に感動した。

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