アンソニー・ホプキンスなどの豪華キャストに加え、衣装・脚本などにおいても一流のスタッフによって制作されたこの映画。
怖いよ。でもかなり良かったです。
そもそもの目的はベニチオ・デル・トロ(名前が長いので、以下ベンと呼ばせてください)の新作なので早く見たかったという理由も大きいのですが、例えば「AVATAR」のような、(「創造性」という意味でも)最新技術を駆使した映画が多い中、敢えて1941年に公開された「狼男(日本未上映)」をリメイクし、旧き良き名作を現在に残そうという試みも気になりました。
狼男というと、「満月の夜に(カッコイイ)男性が変身して、本人の意に反して凶暴になる」というイメージを持っており、マイケル・ジャクソンのショートフィルム「Thriller」にしても同様。
しかしながら、公開された映画の詳細ストーリーは知らなかったため、この度の「WOLFMAN」を興味深く拝見しました。
アッと驚かされると、手に持っている物を落としてしまうぐらい驚かされるのが苦手なわたしですが、前半は手に持っているポップコーンをばらまいてしまうんじゃないかと思うほどのビックリ怖い系のシーンの連続で、心臓が止まりそうになりました。
ところが後半になると、ストーリーに仕込まれた謎が解き明かされてゆき、アンソニー・ホプキンス的怖さがじわじわと伝わってくる恐怖も加わってゆきます。
ネタバレになるので詳細は割愛しますが、19世紀末という時代のムードたっぷりの中で繰り広げられる「連続殺人」と、各人の心理描写は見事でした。
またベンの演技はやはり素晴らしく、夜が明けて人間に戻った際、我に返って血みどろになった顔を必死に洗い拭おうとしているシーンが印象的で、自分ではコントロールできない状態への恐怖やショック・無情感・悲しみ etc. といった感情が見事に表現されており、前作(2部作のうちの)「チェ 39歳 別れの手紙」とはまた違った生身の人間の感情がリアルに感じられました。
ご存知の通り、ウルフマンが命を落とすというラストですが、その最期のシーンがあまりに美しく、感動して泣きました。
余談ですが、ベンがオオカミへと変化(へんげ)する様に既視感を覚え、それが確信へと変わったのですが、エンドロールで確認したところ、ウルフマンの特殊メイクは、やはりマイケルのThrillerと同じ、業界でのパイオニアであるリック・ベイカー氏が担当されていました。
Thrillerの制作から20年以上も経て、表現はさらにリアルになったものの、リックもマイケルを思い起こさなかったわけがないはず・・・ と何だかちょっと涙目になりました。。。 ←結構Thrillerのまんまなところがあるw
特殊メイク中のベニチオ・デル・トロ
ホラー映画にしてスプラッターありなので苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、ビジュアルだけでなく、登場人物の心理という観点で見ていただきたいと思う映画でした。
☆☆☆☆★(4.5点/5点満点)
写真は公式サイトおよびパンフレットから転載させていただいています。